【胃潰瘍】と【十二指腸潰瘍】は、よく聞く病名ではありますが、それぞれがどんな病気で 原因や症状はどんなものがあるのか、説明できる人は少ないといわれています。各々は併発する可能性があるのか、関連性があるのかなどについて解説していきます。
原因や症状について
<胃潰瘍>
まず、胃潰瘍は、食べ物を消化するための胃酸が胃の粘膜まで消化してしまって、胃の中の壁が傷ついてしまった状態のことをいいます。症状は、食後の胃の痛みや、胸やけ、吐き気などが代表的です。ストレスがきっかけで起きることがあるため、ストレス性潰瘍とも言われ、これを【急性胃潰瘍】といいます。
ストレス以外での主な原因は、「胃酸の出すぎ」や「胃粘液が不足すること」と「ピロリ菌の影響によるもの」があります。人体に攻撃的で、酸性の胃の中でも生き残る強力な菌で、ピロリ菌が体内にあると、胃の病気になる可能性が高まると言われています。ピロリ菌は食べ物や飲み物など、口から体内に入ることで感染するのですが、唾液等で感染してしまう可能性もあります。
少し難しい言い方になりますが、胃潰瘍の発生個所は胃角部小弯側(いかくぶしょうわんそく)といって、バリウム検査の写真で胃を撮影した時に一ヶ所へこんで曲がり角のように見える場所(胃の真ん中付近)をいいます。胃に差し込むような痛みがあるのはここが胃潰瘍の発生個所だからですね。痛みは食後の割と早いうちにでることが多いです。発症する年齢層は主に40~60歳代です。
<十二指腸潰瘍>
続いて、十二指腸潰瘍についての説明ですが、まず『十二指腸』とは、胃と小腸の間にある消化管です。約25cm~30cm ほどあり、「12インチの腸」という意味の外国語を訳した結果この名前になったという説があります。
十二指腸潰瘍の発症箇所は十二指腸球部前壁といって胃の幽門部(胃の出口)のすぐ後ろにある十二指腸で、バリウム検査の写真でボールのように丸くみえるところです。ちょうどおへその横ななめちょっと下あたりが差し込むように痛みが生じたりします。
その痛みは空腹時や夜間などに多く、食事によって痛みが和らぎます。年齢層は20~40歳代です。胃潰瘍が40代以上の方に多いのに対し、若年層に多い病気だということです。
十二指腸潰瘍との違いは?
胃潰瘍と十二指腸潰瘍は似た病気ですが、大きな違いもあります。 胃潰瘍と十二指腸潰瘍の違いは、『痛みを感じる時期』や『他発症する年齢』『発症する場所』といったところです。
胃潰瘍の痛みは食後に感じ、十二指腸潰瘍の痛みは空腹の時や夜間に感じます。発症年齢は、胃潰瘍は40~60歳代の人に多く、十二指腸潰瘍は20~40歳第の人に多く発症する病気です。臨床的には(つまり普段の診察の時は)、医師は患者が若年なら十二指腸潰瘍を疑い、患者が中年以降なら胃潰瘍の可能性を疑うといった感覚で、年齢的な違いがあるようです。
併発することもあるの!?
胃から十二指腸に繋がる「幽門」から上の潰瘍が【胃潰瘍】で、下が【十二指腸潰瘍】だけの事です。潰瘍の範囲が広ければ胃潰瘍と十二指腸潰瘍を併発しても全く不思議ではありません。できる場所によ り「胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」と名称を区別されてはいますが、病態や治療が似ているため、この二つをひっくるめて「消化性潰瘍」と呼ぶこともあります。
胃潰瘍でも十二指腸潰瘍でも、放置するとどんどん潰瘍は深くなり、胃や十二指腸に穴が空いてしまう「穿孔」という状態が起こります。こうなると、激しい腹痛が起こり【腹膜炎】というひどい状態になります。胃液や腸液が消化管の外に漏れ出て重篤な炎症を起こし、緊急手術が必要となります。こうならない為にも、最近胃が痛くなることが多いなという方は早めの内視鏡検査を受けることをお勧めします。
胃潰瘍と十二指腸潰瘍ともに、医師の指示に従って、食事には特に注意し、お薬の療法を併用し、内科的に治療するのが原則です。ただし、胃潰瘍も十二指腸潰瘍も、放置しておいても自然に治ってしまうことのある、本質的には治りやすい病気です。現在は早期に診察を受ける人が多く、早期治療の効果が大きく、更には薬剤が進歩したことでほとんどの人は内科的治療で治すことができます。しかし、再発も多く、治癒と再発をくり返すうちに合併症をおこし、手術が必要となるケースもあるようです。
潰瘍の経過は、合併症のない軽症の場合と合併症を伴った重症の場合とでは大きく違います。一般的には、順調な経過をたどる潰瘍が多いのですが、なかなか治りにくいものもあります。X線検査や内視鏡検査で潰瘍が消失してしまったと考えられるもので、再発や再燃を繰り返すことが多く、これも潰瘍の別の特徴の一つとされています。治療方法が進歩して治ることの確率が高まったからとはいえ、進行することで危険も伴いますので、早めの検査、診察を受けましょう。